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独脱原発「住民が政策転換を迫った」〈限界にっぽん〉

福島原発事故後、「脱原発」を決めた海外の国・地域
■福島が問う政府:3
 政府が課題を「先送り」し、古い手法でしか対応できないことが、福島の復興を遅らせている。原発を将来どうするか、という国の重要な針路もまだ決められない。こうした日本とは対照的に、「脱原発」を決めたドイツでは、民意をくみ上げて新しい仕組みをつくってきた政府が変革を支えている。
■民意をくみ上げて
 ドイツ南部のバーデン・ビュルテンベルク州で始まった「脱原発」のデモは、いつもと様子が違っていた。主婦や若者らが次々と人の波に加わる。手をつないで広がる「人間の鎖」は、州都シュツットガルトと操業中の原発を結ぶ約45キロの道を埋めていった。
 福島第一原発1号機の水素爆発が起きた昨年3月12日。ドイツのテレビ局も繰り返し、煙が立ちのぼる原発の様子を伝えていた。技術力を誇っていた日本での衝撃的な事故に、「ひとごとではない」という不安が急速に広がり、住民たちをデモへと駆りたてた。参加者は予想のほぼ2倍、南部では過去最高の約6万人にのぼったという。
 「脱原発をただちに実現してほしいという住民の切実な思いが、原発寄りだったメルケル政権に転換を迫った」。デモを企画した環境活動家フランツ・プーターさん(37)は言う。
 2022年までの「脱原発」をメルケル首相が宣言したのは、それからわずか3カ月後のことだった。
■草の根で世論づくり
 ドイツで「脱原発」の扉を開けたのは、環境運動で知られる「緑の党」だった。初めて主要政党・社会民主党のシュレーダー連立政権に参加したのを機に、同政権は00年、緑の党の主張を聞き入れ、国内にあるすべての原発を段階的に廃棄する方針を打ち出した。
 実現にむけて、政権はすぐに足場固めに入る。原発に代わるエネルギー源として、1990年代から伸び始めていた風力や太陽光などの自然エネルギーによる発電を主要産業に育て、原発に頼らなくていいようにする必要があった。
 柱になったのは、自然エネで発電した電気を既存の電力会社に買い取らせる「固定価格買い取り制度」だった。「寝てても風や太陽が『チャリン、チャリン』と自然にお金をもうけさせてくれる仕組みをつくれば、一般市民や企業が率先して脱原発を進めてくれる」。緑の党でエネルギー政策を担ったハンス・ヨーゼフ・フェル議員(60)は、そう確信していた。
 だが、新制度の導入には、原発をもつ既存の大手電力会社が反発し、その意向を受けた族議員や関係省庁も抵抗した。
 「政策を決めるのは議会だ。最後は採決で決める」。フェル議員はそう言って閣内で猛反対したミュラー経済相らをたしなめ、議会の多数派工作に奔走した。
 効果が大きかったのは、インターネットを使った「草の根」運動だった。環境団体などに「地球に優しい自然エネは経済的な利益にもなる。地元議員に手紙や電話で圧力をかけ、脱原発に賛成させよう」と呼びかけた。議会近くで5千人規模のデモや集会も開き、議員たちを揺さぶった。
 地域社会での働きかけが実を結び、何とか買い取り制度の導入にこぎつけた。
 「中央集権型の電力業界は、首都で政界工作に没頭していた。対照的に、我々は地域分散型で攻勢をかけ、草の根レベルの世論づくりに徹した」と、脱原発を支援した起業家ハインリッヒ・バーテルトさん(57)は振り返る。
■市民が自然エネルギー生産
 狙い通り、自然エネの発電事業に取り組む人たちは増え始めた。だが、大手電力会社の「妨害」も次第に激しくなった。
 「あなたの会社がつくった電力は受け入れられません。送電網への接続は物理的に無理です」
 風力発電の施設をつくり、電力事業に参入したドイツ北部の兼業農家ハーマン・アルバースさん(52)は01年、地元の大手電力会社から電気の買い取り拒否をいきなり通告された。
 政府が買い取り制度で義務づけたのに、なぜ電力会社は拒否するのか。「明確な違法行為。競争相手になり始めた再生エネルギー会社への露骨な妨害だ」。アルバースさんは地元の裁判所に提訴した。
 発電施設をつくるために借りた1500万ユーロ(約15億円)の負担も重く、事業の破綻(はたん)もちらついたが、勝訴判決が出て生き残った。
 「電力会社があれほど横柄だったとは……」。南西部の山村シェーナウ(人口約2500人)に住むウルズラ・スラデックさん(65)も、電力会社と戦った末に自然エネ会社を立ち上げた一人だ。
 86年のチェルノブイリ原発事故をきっかけに、子どもたちの健康を心配して立ち上がった母親らの「反乱」の主人公として知られる。事故直後、地元の電力会社を訪ねて脱原発や節電について相談したが、対応した幹部に「私たちの商売を邪魔するのか」「弁護士を呼びますよ」と一蹴された。
 「こんな会社には任せられない。自分たちの会社をつくろう」と決心した。盛り上がる住民運動を抑え込もうと電力会社は「妨害」を繰り返したが、「エネルギーや利益を独占しようとする電力会社への怒り」を支えに耐え、自然エネ会社の経営を軌道に乗せた。いまでは約14万世帯に電気を供給するまでに成長し、住民運営型の自然エネのモデルになっている。
 ドイツの自然エネ発電は住民グループや小さな集落などによる事業が多いのが特徴だ。業界に詳しいポール・ガイプさん(61)は「自然エネルギーの生産能力の半分は、農家や一般市民が担っている」という。
 彼らが度重なる電力会社の横やりをはねのけることができたのは「ナチスへの反省などで地方分権が徹底され、市民の間に高い自立意識が根づいていることも大きい」と、住民主導の自然エネに取り組んできた起業家のヨーゼフ・ペッシュさん(54)は言う。
 こうした発電業者たちと環境運動が結びついた「草の根」のパワーが、電力会社や族議員、関係省庁が握る既得権益を突き崩していった。
 その構造はいまも変わらない。保守系の巻き返しでメルケル政権が一時、原発延命へとなびいても、デモを続けた住民たちのパワーが、政権の「脱原発の先送り」に待ったをかけた。
 背景には、原発の使用済み核燃料の最終処分をどうするかが決まらず、有権者の間に不安が募っていたこともある。「ちゃんとしたトイレ(ごみ捨て場)もないのに、核エネルギーの大食を続けていていいのか」(環境団体ブントのミコ・オミエタンスキーさん)という懸念だ。政府高官は「福島原発の事故が重なり、政府は矛盾を抱えた原発政策に見切りをつけた」と説明する。
 「ドイツが前進できたのは、私たち民衆が政府を突き動かしてきたからだ。民意を少しずつ政策に反映してきた政府の現実的な判断の積み重ねでもある」。住民主導の自然エネに取り組んできた起業家のヨーゼフ・ペッシュさん(54)は語った。(フライブルク〈ドイツ南西部〉=西崎香)

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